Takuya Yada's 重金属ブログ

関西で音楽活動(主にメタル)をしているTakuya Yadaがメタル、イギリス、映画について考察するブログです

宇宙規模の虚無感を体感することで心の負担が軽くなる【重金属SF紹介】カート・ヴォネガット・ジュニア ー タイタンの妖女

今回は映画紹介同様にネタバレ一切なしで小説を紹介させていただきます。
1回目ということでSF小説の金字塔、1959年発表のカート・ヴォネガット・ジュニアの「タイタンの妖女」をやります。



SFのあらすじはかなり細かくなりますので簡潔に行きます。

22世期の大富豪マラカイ・コンスタントは父親の資産を殖やすということ以外には特に人生において何もしていない。
彼が唯一持っていたのが幸運。 どういう訳か偶然や巡り合わせで幸運が起こり失敗しない。

そんな時、ラムフォードという宇宙探検家と出会う。
ラムフォードは火星を旅している際に時間等曲率漏斗という現象に飛び込み一緒にいた飼い犬と共に「波動現象」となってしまう。
その結果、過去と未来が見える様になり、その絶対に外れる事のない予言を自身の小説を通じて人々に伝えていた。

ラムフォードの予言により、コンスタントは最終目的地「タイタン」へと向かう宇宙船に乗り込むことになる。。。



すでに難しい感じがしますが、簡単に言えば大富豪の不思議な宇宙旅行記です。笑


序盤は設定を理解するのに結構時間がかかるのですが、旅が始まればスイスイと読める作品です。
1番のテーマとされているのは、自由意志ですが、その説明はネタバレしないと無理ですので、今回は一つにテーマを絞ります。

それは、「虚無感」です。
この作品、不思議な宇宙旅行記、しかもラムフォードはコンスタントの旅の結末まで分かって行動させている設定なので、読者はラムフォードがコンスタントをタイタンに送った本当の目的にばかり注目がいく様になります。

何不自由なく富豪として暮らして来たコンスタントを待つのはただただ不運が永遠に続く宇宙旅行。 なんなら記憶さえ奪われちゃいます。

そんな旅行記の最後は「タイタン」に着いて、ラムフォードの真の目的を知り、むくわれたねって感じで感動して終わりたいじゃないですか?

そうならないのがこの小説の凄い所。。
初めてこれを読んだ時、エピローグに差し掛かると自分の呼吸数が明らかに減り出した事に気付き、心臓が早くなり、あまりの切なさに、いたたまれない気持ちになり、目眩で倒れそうになり途中で休憩しました。

読み終わったのが深夜でしたので、無音という音がさらに小説の中の虚無感を増幅させたこともあります。。

よく、波乱万丈な人生を送る有名人が「大丈夫。お前の下には俺がいる」とか言う方がいますよね?
もちろん、その人と比べればあなたが今抱えている悩みは悩みではないという事でしょうが、結局は同じ地球の中の人間ですので、その有名人が送った不運な人生というのも、借金や離婚や、想像の範囲内での不運。

しかし、コンスタントの場合。決定している未来へ向かい、火星、水星、地球、タイタン星という宇宙規模の想像出来ない大きなスケールでの不運を体験するのです。

その冒険記の最後に待つ虚無感を体感すれば、地球規模のほとんどの不幸に勝てる気がします。
ただし、この作品を読む事でメンタルやられる可能性はありますが。。笑
それくらい衝撃的な作品です。

爆笑問題太田光さんの事務所がタイタンなのは有名な話ですが、ガイナックスのアニメシリーズ「トップをねらえ」や新海誠の「ほしのこえ」はかなりこの作品の影響を受けていると感じます。(個人的意見です)

トップをねらえ」「ほしのこえ」を見た人ならなんとなく分かっていただけると思いますが、これ以上言うとネタバレの範囲になりますので、今回はここで終わります。

まだ読んだ事ない方が羨ましい。

あのエピローグ体験が出来るなら読んだ記憶を消して欲しいくらいです。

2回目以降は違う感動はありますが、やはり初めてには勝てませんからね。。


SF小説に興味があるが何を最初に読めば良いのかと言う人には是非手に取っていただきたい作品です。
人生観変わりますよ🤘🤘🤘

 

 

【文庫本】


タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫 SF 262)

 

 

kindle

 


タイタンの妖女