Takuya Yada's 重金属ブログ

関西で音楽活動(主にメタル)をしているTakuya Yadaがメタル、イギリス、映画について考察するブログです

【重金属SF紹介】少子化対策のアイデアは火星人から? ロバート・ハインライン ー 天翔る少女

ネタバレなしに紹介していくシリーズ第二弾です!

今回は1958年に発刊されたロバート・ハインラインの「天翔る少女」(あまかけるしょうじょ)を紹介いたします。

ハインラインと言えばハードSFと思う人も多いですが、ジュブナイルSF(10代向けのSF)も多く書いています。
その中でも好きなのがこの「天翔る少女」


火星年齢で8歳(地球で15歳前後)の少女パディと弟のクラーク、そして上院議員でもある祖父のトムがテラ(地球)へと向かう冒険日記。

本当にこれだけの話なのですが、あえていうならなぜこの3人で地球へと向かったのかという所が落とし所って感じです。



オススメポイント1は、最後の最後までポディの書いた日記という形で話が進みます。
途中、弟がこっそり書いたりとかはあるのですが、基本彼女の目線オンリーなんです。

なので、彼女が見ていない事は想像や憶測で書かれています。
そのため、彼女が騙されたりしても、彼女が犯人を突き止めるまで読者も分からないという感じになり、彼女と同じ不安がリアルに感じる事になります。

作品中の正義や事実も彼女の正義や事実という所がすごく面白いんです。


オススメポイント2は、ハインラインお得意の政治的視点です。
主に、火星、金星、地球の3つが出てくるのですが、地球はいわゆる全ての惑星を管理している様な惑星で、火星は公用語は火星語と英語。 ヨーロッパ辺りの移民が多く、エンターテイメントはほとんどなく、禁欲文化があり、淡々と暮らしている感じ。

金星は逆に商業大国。公用語は金星語オルトとポルトガル語
エンターテイメントや商業が盛んで、人々はコーポと呼ばれる組織に雇われ、稼ぎの一定額までは全額支払われ、それ以上は組織と折半。

この設定がたまらなく好きなんですよね。
なんとなく、惑星ごとに地球のどこら辺の文化を指してるかが想像できるので、惑星の設定がバチっと入ってくるんですよね。


そして最後のオススメポイント3が一番好きな所!

火星では移民が始まって人口が必要な時に重力や酸素の関係で高齢出産等が出来るか実証されていない事や金銭面の問題から「極低温保存」という技術が使われているのです。

簡単に説明すると、若い夫婦は金銭面で若いうちに出産が出来ない事が多い事から、政府は1家族5人を若い間に産む権利を与え、すぐに「極低温保存」をし、金銭面で余裕が出た時に一人ずつ解凍していくというシステムなんです。

要は体が元気なうちに子供を作り、子育て出来る環境になった時に子供を解凍するという事です。

ぶっ飛んだ話ですが、これが1958年に発想されてるのが凄いですよね。
そして、この話がぶっ飛んではないという事が最近研究で明らかになってきました。

ヒトゲノムです。  
人には元々持っている能力でも使わなくなり衰退した能力がたくさんある様です。
その一つに「冬眠」というのがあり、人工冬眠が可能なのではないかと言われています。

完全に歳を取らないという事は出来ない様ですが、確か歳を取ることを100分の1に出来ると聞いた事があるので、5年で約180日。 半年歳を取る計算ですね。

小説内の話を冬眠で考えると、18歳から5人産み続けたとしても、早くても5人目は25歳前後。
50歳で最後の子の冬眠を止めると約3歳にはなってるものの、現実的な気もします。
5人産むで考えるのでこうなるんですが。笑   

32年間で5人育てながら両親とも仕事を継続し互いに出世していくのは不可能ではないでしょうが、リスク高いですからね。

SFは夢があるだけでなく、けっこう未来予測が当たったりしますからね。


最後にですが、主人公パディは日記を書いてる訳で、小説を書いてる訳ではありませんので、文体が最初は結構イライラします。笑

でも途中から一気に引き込まれますので、気長に楽しんでもらえればと思います。
ジュブナイルSFですので、読みやすいので是非是非!!

 

 

 

【通常盤】


天翔る少女 (創元SF文庫)

 

 

【新訳版】


天翔る少女【新訳版】 (創元SF文庫)